桑都八王子:水路に囲まれた製糸場跡、清水川

例年になく百日紅が気になってしょうがない、今年の夏。

百日紅の綺麗な場所ってどこだったかしら・・・と候補をいくつか考えていた時、以前訪れた、八王子の「田町遊郭」跡を東西に貫く、大きな通りを百日紅の並木が彩っていたのをふと思い出したのです。

これまでも幾度となく引き合いに出している愛読書「昭和二十年東京地図・周縁のこと」(1987年出版)に収録されている田町遊郭の写真を見ていたら、今迄目に留めていなかった、同じ八王子市内の建物の写真が急に気になり出して・・・

収録されている住所を頼りにストリートビューで検索してみると(つくづく、便利な時代)、何とほぼ同じ状態の建物が奇跡的に現存している様子。1987年当時においても、割と古い建物や街角の写真が多いのが特徴的な本なのですが・・・

明日にでも消えて無くなってしまう気がして、何だか気が焦り、急ぎ現地へ確認に向かいました。

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消防車などを製造する「日本機械工業」の寮敷地、ということで、不思議な光景を生み出しています。
何だか消防車と共に、今にも左方向へ動き出しそう。

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元々は片倉製糸の蚕室として利用されてた建物とのこと。
現在は建物自体は使われていないようで、屋根瓦が落ちている箇所なども見られますが、広い敷地にゆったり配された貴重な建物に見入ってしまいます。
桑都だ・・・・!!と大声で放ちたい心境でした。
明治10年に「萩原製糸工場」として創業(現地に来る途中渡った「萩原橋」にその名を遺す)、その後片倉製糸に譲渡、昭和10年後半くらいに工場は「日本機械工業」となり、歴史を重ねて現在に至っています。

ここで片倉の建物に出会うなんて・・・(今ではショッピングセンター業の印象の方が強いですね。紡績系はどこもそうですが・・)

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夏空。真紅の消防車。窓の連続する旧い建物。

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悠々と、堂々と存在しています。旧くて使われてはいないようだけど、手入れはされている感じがします。
その幾多の「手」を感じるのも好き・・・

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「中野町西二丁目」の頃の、琺瑯住居表示看板も見て取れます。(現在は中野上町4丁目)

「寮建物」は二棟残っています。秋川街道を挟んで北側が社屋、道路を挟んで東側も同様の古い戸建群があり、関連があるのかもしれません。社宅とか・・

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寮敷地の東側辺りです。眼の形のような柵が印象的。
「昭和二十年東京地図」にも、水路沿いの「三軒長屋」というタイトルの写真もあるので、この辺りのどこかだったのかもしれません。とにかく水路が多い・・・

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寮敷地の西側からは、水の流れていない水路跡との絶景を楽しむことが出来ます。水路は左に曲がっていきます。
石の敷かれた縁も、心に訴える調べのよう・・・

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染色所の建物が水路上に張り出しています。



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片方の護岸が煉瓦でざっくりと積まれています。面白い!

さて、この水路も気になりますが、後程考察していきます。




「昭和二十年東京地図」には社屋(工場)の方の写真も収録されており、そちらの方も本とほぼ変わらない姿で現役でした。
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「昭和二十年東京地図」では、門柱の上に球型の照明がありましたが・・・それでもほぼ変わらぬ光景に、胸が熱くなります。
(気温の方も37℃、激暑でした。)

こちらの敷地の方も、片倉製糸時代の建物がいくつか使われているそうです。
ああ、カタクラ、カタクラ・・・(次第に呪文のような響きに。。。)

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地図を眺めていると、工場敷地に一本水路のような線が描かれていますし、右の方には川筋も見えているし、ちょいちょいくすぐられます。
まだこの辺りがいかなる土地なのか全く知識が無く、放り出された子ヤギのようなのですが・・・(自分でもよくわからない比喩)

修景水路のような描かれ方なので気になっていまして、実際は見えるのかな?と思いましたが敷地内の水路自体は確認できず。
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工場の南側、東側は外周を水路で囲われていて(北側は暑さ等々※の為、積み残してしまいました。)、写真は南側で秋川街道沿いなのですが、年月を経た樹木が覆っていてまるでお堀のよう。歩道に影を落としていて素敵な風景を造り出しており、
城郭を想起させるような一角でした。

春には桜を見に来たい場所がまた一つ増えました。こうして小さな愉しみの小箱の中身が増えていくんです。
遠くから引きで眺めると、この工場敷地全体が森のような、お城のような感じがしてきます。
(※後述)

そして、水路をじっと眺めていたら・・・

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水路の西端部分が少し広くなっており、とても澄んだ水が溜まっていて、流れ・動き、もあるのです。
湧水じゃないかな?と心躍りました。この日は建物が目的で、まさか湧水に出会えるなんて・・・・!!

おうちに帰って調べてみると、日本機械工業の敷地には湧水があり、消防車のポンプ放水テストなどに現在でも利用されている事、昔は湧水の池があったが埋め立てられてしまったこと、その水が「清水川」という短い川の源流のひとつだったこと・・等々がわかりました。
湧水の利用用途を聞くと、凄く腑に落ちて気持ちが良いです。

泉湧くシルクの工場。湧水があったからこの地に製糸場が設けられたのでしょうか。。

水に呼ばれる。を実感したひと時でした。

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1974年くらいまでの空中写真だと池が残っているのがはっきりとわかります。
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今昔マップから引用させていただいた、1944-1954年地図と現在との比較。

「清水川」の源流にはこちらの湧水池や、近接する居宅の湧水(水車があった)、更に西へ進んで「楢原町の旧私学教育研究所(施設は現存せず)の池」等々があったとのことです。

先程載せた、煉瓦の護岸の空水路はそちらからきた流れのようです。

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地理院地図より引用、地図中央から少々左下の蛇行した水路線。煉瓦護岸の水路跡はこの辺りを映したものでした。

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気掛かりなのは、この界隈(秋川街道南側)で区画整理の気配が現実に形に現われている事。
ふとしたきっかけで急に好奇心がそそられて赴くことになった土地って、消える気配を虫の知らせ的な何かで感じ取って・・・の事例が何度かあるので・・・

で、またまた調べていたら、当該区画整理事業に伴って、清水川の暗渠化の話も取り沙汰されてるそう。
まだ出会ったばかりで、ほんの一角しか歩いていないのですが。


私が出会った清水川の断片たち
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水車のあたりかな。


住宅地の開発に伴って再整備された感のある区間
ここの手前の場所、メダカくらいの大きさの小魚が沢山集まってきていました。

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ここはグーグル航空写真で気になっていた場所でしたが、このように整備されたのですね。
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ああ・・・お上が「水路」という文字を置いてくれるだけでこんなに心が落ち着くなんて
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この辺りは再整備された水路の下流側が一瞬蓋掛けされて、また開渠となって姿を表し出てきます。

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※日本機械工業の北側に行けなかったのは激暑のせいでもあるのですが、通り沿いにこんな案件があって・・・
(通り挟んだ側の森が日本機械工業の敷地。)

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お野菜の無人販売所脇にあった、当世風の?創作案山子。
蛭子さんっぽいタッチ。

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何気に奥にもう一人潜んでいたり・・・
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リアルと虚構。男と女。大人と子供。立体と平面。
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お殿さまも見張ってます。城に還りたい殿様、城の北側を守る防人たち。
(ストリートビュー見たら、別の案山子だったので定期的に着せ替えが行われているのかも)

もうこれらで精魂尽き果てた感があり、田町遊郭に移動したのでした。
また改めて、追記していったり、そんなスタイルで行こうかと思ってます。

田町遊郭のお話も綴りたいな・・・

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八王子は2年ぶりですが、前回よりも甲州街道沿いのマンション化の動きが一層進行しているようで。
時限的に、旧い建物の側面を思いがけず目にする機会が多く、くすんだ中にも鮮やかな断面にハッとさせられたのが印象的でした。
(あと、ユーミンの実家チェックしたかった・・・)
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おまけ。
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田町遊郭跡地の百日紅、散り、再び寄り集まったものも断片的に載せてみました。

まるで地表の花束ね。明日には色・形を変えているんでしょう。
ふと感じる刹那なのでした。

白いのはまだこれから咲くみたいです・・・

あさかわを渡れば 富士の影清く 桑の都に青嵐ふく

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by onnbubatta | 2018-07-22 16:25 | 八王子 | Comments(0)


暗渠、猫、池、高低差、崖、弁天、軍遺構、建築、階段、廃線、天体   その他徒然(適当です)


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