大森海岸~暗渠、潮の香りの料亭街跡散策①
少し前に品川辺り(仙台坂、ゼームス坂界隈)を歩く機会があって、城南方面へひたひた、ひたひたと足を踏み入れ始めてました。
何故か私の頭の中では、なんかあれなんですが品川=小平事件の小平義雄、のイメージがあって、そこから「大井海岸町」という旧町名に辿り/流れ着いたというのもあります。そこには、最近になって急激に興味が湧いてきた「料亭街」がかつてあったのでした。
今迄全く気が付かなかった入り堀跡みたいなのもあるんですよね。
はじめての「大森海岸」へ向かいます。
去年の今頃、大森町駅も暗渠散策で初めて訪れて、何だか「春には大森」の流れが来ているのを感じています。
海が遠ざかった歓楽街という点では愛知県碧南市衣浦の記事とも通じるような。
スタートは、大森駅から。
クリーニング屋さん「あらがや」(荒賀さん)のタイルを見に来ました。
今昔マップ(1927-1939)より地図を引用させていただきました。
京浜電気鉄道大森支線の跡を通って大森海岸駅方面へ向かいます。
大森海岸駅の北側、南側両方に料亭街はあったのですが、まずは北側から。
あまり遺構は残っていないとの事ですが・・・
「大森海岸 芸妓置屋 由の家」様のホームページに寄りますと、こちらの建物は芸妓置屋だったそうです。
過去住宅地図を何年か分見た感じでは個人宅のような表記でした。
溶岩っぽい石造が玄関の内側に残っていて、異世界の雰囲気を少し残していました。(2021.4追記、解体済み)
たまたまかもしれないですが、建物側面の円柱に勝手に料亭街のしっとりした空気を覚えてしまうのでした。
駅近くの「松乃鮨」さんの近くに、1960年代の地図では「題目堂」の表記があってずっと気になっていたんですが、以降の地図では消えており、現地はどうなっているのかと思っていました。が、やはり何もありませんでした。
きっと、どこかへ移設されたのだとは思いますが。
(ちなみに、駅の反対側~海側には大型の料亭が林立し、その中の「楽々」などは地図でも(不夜城)の別名表記まで記載されていて興味深いです。)
更に年代を遡ると、明治期には駅の反対側(東側)に寺院の表記が見て取れます。
これが、上記の「題目堂」なのか?と思い、帝都地形図を引きましたら
「国道1号東海道の街道脇にある題目堂は寛政年間(1789-1801)の開基である。鈴ヶ森刑場と関係はないが、刑場付近の悪臭、凄惨な様子を通行中にみた元小田原藩士で池上本門寺の日観が、霊を鎮める為に草庵を結んだのが始まりと言われる。」
の記載がありました。
国道の拡幅に伴って駅の西側に移されたのち、時の流れでまた別の地に。。。という流浪のお堂なのでしょうか。
料亭ではなく比較的新しい年代の建物なのだけど、残り香みたいなものを感じられる間口。
駅の南側へ移動します。
今は埋め立てられている入り堀?(名前がわからない・・・!水路跡のブログなのに・・・八幡橋、の名前は判るのですが)沿いに旧い建物が一軒残っているのをグーグルマップでチェックしていたので。
この建物を見たかったのですが
護岸のようなコンクリ―トが残っていました。
2020.9追記 戦後のこの辺りの堀の様子が小関智弘著「東京大森海岸ぼくの戦争」に描かれていたので、引用させていただきます。
「空襲で焼け落ちて廃墟となったガス電の下を通って、磐井神社の横を流れる大どぶが海に出るところに、十隻ほどのボートを舫ったボート屋があった。篠崎君にボートの漕ぎ方を教えられた。夜のボートに二人で乗った。小町園や悟空林も、再び高級料亭として賑わっていた。料亭から突き出したように小さな桟橋が架かっていた。その幅の狭い桟橋の上で、米兵が三味線に合わせて踊るのが見えた。時には着物を大胆に尻端折りした芸者と米兵が、その桟橋の先端でドンケツ遊びをしていた。三味線に合わせ、手拍子を取りながら尻をぶつけ合って相手を海に落とす。芸者たちの嬌声がいつまでも続いた。」
嬌声にとって変わったのが、モーターボートの轟音、というところでしょうか。
八幡海岸に、堀からの澪筋のようなものは描かれており、しばしうっとりしてしまいます。
「梅元」南側の堀は国道を「八幡橋」で渡って、磐井神社を回って京急とぶつかっているように描かれています。
(八幡橋 大森海岸、で堀の名称を検索しても江東区の方の八幡橋が出てきてしまって・・・)
(清花園は鉱泉浴場や釣堀を備えた遊園地で、電力の供給を京急から受けていたとの事。のちのアサヒビール大森工場。
現在の「清花公園」にその名残がかろうじて感じられます。)
(清花園南の「潮田」地名もかなりキテます。)
次回に続きます。
by onnbubatta
| 2019-03-03 12:27
| 城南
|
Comments(2)
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by
sumizome_sakura
at 2019-03-06 14:44
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この謎の水路、名前はわからないのですが、前から仮説?妄想?を一つ抱いていて。
磐井神社は江戸東京でも最古級の神社で、鈴ヶ森という名前もあるので、新橋の「烏森」、人形町の「椙森」、川崎の「姥が森」など同じく、もともとは海岸線ぞいの島状の土地で、そこに泉があったのではないか、と考えています。
延喜式神名帳には「磐井」という社名がでてくるし、万葉集の頃には、この付近一帯が「笠島」と呼ばれていたようなので。
『江戸名所図会』でもそんな感じで描いていますが、同じような想像は神社の方もしておられたようです。菱沼勇さんの『武蔵の古社』にこうありました(136頁)。
「森田宮司の談によると、今の社殿の地下には、大きな岩盤がひろがっており、昔は一つの岩の島をなしていたと思われるという。おそらく長い年月の間に……土砂が積もりつもって四辺を埋め、今では陸地つづきの平地になってしまったであろう。そして以前には、その広い岩盤の間に泉があって、清水を豊富に湧出していたものであろう。」
地質とか地形の復元は裏付けがとれませんが、神社がもともと島状の土地だったとすれば、付近に比べて地盤がより軟弱でないことはありうると思います。
『江戸明治重ね地図』だと、神社西側の水路は郵便地図の頃よりさらに南に伸びていたようです。郵便地図に比べると、こちらの地形や水路の描き方は厳密ではないですが、清花園鉱泉の入堀(「釣堀」だった水路でしょうか?)ができる前の付近の様子は、大まかにはわかるのではないでしょうか。
掘削された堀ではなく、埋め残りで、いろんな用途に使われた水路だとすれば、固有名がない可能性もありますね。もちろん、付近の人たちが呼んでいた名前はあるでしょうが、その場合は「神社の堀」でも通じるので。
『武蔵の古社』では、「神社の北側と南側とに……小川が二条海に注いでおり」と遠い昔の姿を想像していますが、水路の名前などは特に出てきませんでした。
磐井神社は江戸東京でも最古級の神社で、鈴ヶ森という名前もあるので、新橋の「烏森」、人形町の「椙森」、川崎の「姥が森」など同じく、もともとは海岸線ぞいの島状の土地で、そこに泉があったのではないか、と考えています。
延喜式神名帳には「磐井」という社名がでてくるし、万葉集の頃には、この付近一帯が「笠島」と呼ばれていたようなので。
『江戸名所図会』でもそんな感じで描いていますが、同じような想像は神社の方もしておられたようです。菱沼勇さんの『武蔵の古社』にこうありました(136頁)。
「森田宮司の談によると、今の社殿の地下には、大きな岩盤がひろがっており、昔は一つの岩の島をなしていたと思われるという。おそらく長い年月の間に……土砂が積もりつもって四辺を埋め、今では陸地つづきの平地になってしまったであろう。そして以前には、その広い岩盤の間に泉があって、清水を豊富に湧出していたものであろう。」
地質とか地形の復元は裏付けがとれませんが、神社がもともと島状の土地だったとすれば、付近に比べて地盤がより軟弱でないことはありうると思います。
『江戸明治重ね地図』だと、神社西側の水路は郵便地図の頃よりさらに南に伸びていたようです。郵便地図に比べると、こちらの地形や水路の描き方は厳密ではないですが、清花園鉱泉の入堀(「釣堀」だった水路でしょうか?)ができる前の付近の様子は、大まかにはわかるのではないでしょうか。
掘削された堀ではなく、埋め残りで、いろんな用途に使われた水路だとすれば、固有名がない可能性もありますね。もちろん、付近の人たちが呼んでいた名前はあるでしょうが、その場合は「神社の堀」でも通じるので。
『武蔵の古社』では、「神社の北側と南側とに……小川が二条海に注いでおり」と遠い昔の姿を想像していますが、水路の名前などは特に出てきませんでした。
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onnbubatta at 2019-03-07 21:16
>sumizome_sakuraさん
コメントありがとうございます!
ああ、やはり海岸沿いの珠のように続く島々群の一つでしたか。最近「森」発想がだいぶ薄れてしまっていて、感覚が鈍くなっていました。隣が「潮田」地名なので、川崎と似たような感じもあったかもしれません。
目印としての森、海の手前:際に湧く泉・・・
そして「磐」の字を敢えて使うあたり、只ならぬ背景を感じます。神社内の池、「笠島弁財天」とあったような気がします(なぜか写真を撮る気にならなかったです)
城南の海沿いは地理的に不案内なのですが、鮫洲のあたりにも池のある神社があったりして、なんか併せて訪れてみたいです。
埋め残り・・・削り残し・・浚い残したものってやはり何かが濃縮されて積まれている気がします。こちらの堀、時代や地図ごとに微妙に形が異なっていて、その点でもなかなかミステリアスです。揺らいでる感じがとても春っぽいなという感想を持ちましたw「磐井神社の堀」としてみましょうか・・・
コメントありがとうございます!
ああ、やはり海岸沿いの珠のように続く島々群の一つでしたか。最近「森」発想がだいぶ薄れてしまっていて、感覚が鈍くなっていました。隣が「潮田」地名なので、川崎と似たような感じもあったかもしれません。
目印としての森、海の手前:際に湧く泉・・・
そして「磐」の字を敢えて使うあたり、只ならぬ背景を感じます。神社内の池、「笠島弁財天」とあったような気がします(なぜか写真を撮る気にならなかったです)
城南の海沿いは地理的に不案内なのですが、鮫洲のあたりにも池のある神社があったりして、なんか併せて訪れてみたいです。
埋め残り・・・削り残し・・浚い残したものってやはり何かが濃縮されて積まれている気がします。こちらの堀、時代や地図ごとに微妙に形が異なっていて、その点でもなかなかミステリアスです。揺らいでる感じがとても春っぽいなという感想を持ちましたw「磐井神社の堀」としてみましょうか・・・
暗渠、猫、池、高低差、崖、弁天、軍遺構、建築、階段、廃線、天体 その他徒然(適当です)
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